伝統野菜「山玉おくいも」の数少ない継承者。
大量生産できないため、貴重な作物です。
おくいもとは、山玉地区で昔から受け継がれてきた在来のジャガイモで、いわき市の伝統野菜のひとつです。
蛭田さんはそのおくいもを譲り受け、栽培を続けています。
おくいもをはじめ新鮮な野菜が育つ秘訣は、お手製のEM(有用微生物群)菌を使った有機肥料「EMボカシ」。
特にでんぷん質が多いおくいもは、腐りやすく酸性の土壌でしか育たないため肥沃な土壌づくりが重要です。
蛭田さんが育てたおくいもは学校給食で子供たちに提供されているほか、市内の直売所でも購入することができます。
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蛭田さんは約40aの畑で、おくいもを始めとした野菜を栽培しています。
おくいもは3月初旬に種芋を植え、6月ごろに収穫の時期を迎えます。
掘り起こしの際は機械を使いますが、拾うのは全て手作業。山玉町でおくいもを生産している5名の生産者で協力しながら、伝統をつないでいます。
収穫後のおくいもは腐らないよう乾燥させ、遮光シートを張った納屋で保管します。通常のジャガイモと比べて収穫後のイモから芽が出にくく、大ぶりです。
また、蛭田さんが育てるおくいもは糖度が高く、白質で煮崩れしにくいのが特徴。ねっとりしていて、イモをゆでると汁が白濁し、少しとろみが出ます。煮物はもちろん、みそ汁やポテトチップスにしてもおいしく食べられるそうです。
市内の学校給食では毎年80㎏のおくいもが使われています。
おくいもは同じ土で育てると連作障害が起きるため、1~2年ごとに作る場所を変えています。
また、酸性の土壌でしか育たないため、病気などに細心の注意が必要です。
蛭田さんは自作のEMボカシ肥料を使用し、酸性の土壌でも肥沃な状態を保っています。
EM(有効微生物群)と呼ばれる菌の働きによって土が豊かになり、米ぬかによって野菜に甘みがプラスされるそうです。
ほかにも、ワサビダイコンやスティックいんげん、白菜、ネギ、春菊などさまざまな野菜を育てています。
写真は伝統野菜のひとつ、ワサビダイコンです。
「山わさび」「西洋わさび」や「ホースラディッシュ」と呼ばれています。
水や沢で栽培する「本わさび」と違い、畑で栽培します。その辛味は、本わさびの1.5倍と言われるほどです。
ワサビダイコンは広く根を張るのが特徴で、収穫が大変な野菜ですが、蛭田さんは手作りの筒の中で1本ずつ育てています。
こうすることで収穫の際の手間を削減しているのだそうです。
おすすめの食べ方はしょうゆ漬けにしてお酒のあてに。葉の部分も湯がいて食べることができます。
「生きた文化財」とも呼ばれる伝統野菜を栽培している蛭田さん。
「山玉=おくいも」となるようつないでいきたいと考えつつ、継承については、「生産している人の中に若い人もいるから安心」と次世代に期待をよせています。